テレワークの労務管理に関するQ&A

テレワークのうち在宅勤務を導入する場合、労働契約や就業規則を見直す必要はありますか。
従業員の採用時に在宅勤務制度があることを労働条件通知書や就業規則の規程等で明示し、その合意があれば、通常の勤務から在宅勤務へ業務命令として変更が可能ですが、今回初めて在宅勤務を導入する企業は、従業員の採用時に在宅勤務に関する明示されていない状態です。その場合、採用時に締結した労働契約の労働条件と異なった勤務形態になり、これは労働条件の変更にあたるため、労働条件を変更する場合は、在宅勤務を導入する際の労働条件を明示し、企業と従業員との間で合意が必要です。

労務管理QandAまた、一定の条件のもと、就業規則に定める労働条件を労働契約の内容とすることが認められており、就業規則の変更によって労働条件を変更することも可能です。ただし、一方的に労働条件を従業員の不利益に変更することは原則として許されておりませんので、在宅勤務の導入とあわせて、新たに人事制度・給与制度を導入する場合には注意が必要です。

優先順位また、就業規則と他の労働規範との関係は、左図の通りです。就業規則の内容で、法令や労働協約に反する部分があれば、法令や労働協約の内容が優先されますので、改正をする場合には、全体を通して矛盾がないかを確認する必要があります。
テレワークを導入する場合、必ず事業場外みなし労働時間制を導入する必要はありますか。
テレワークは全ての労働時間制を適用でき、必ずしも事業場外みなし労働時間制を導入する必要はありません。パソコン等の情報通信機器を活用して在宅勤務を実施する場合、在宅勤務者の労働時間を算定することが可能である場合には、通常の労働時間(法定労働時間の原則に基づくもののことです。)が適用されます。

在宅勤務時に事業場外みなし労働時間制を導入する場合には、次の条件をみたす必要があります。
(1)当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること。
(2)当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
→「使用者の指示により常時」とは、在宅勤務者が自分の意思で通信可能な状態を切断することが認められていない状態をさします。
→「通信可能な状態」とは、在宅勤務者に対して電子メール等により具体的な指示を随時行うことが可能であり、在宅勤務者がそれに即応しなければならないような状態の意味です。たとえば、インターネット等の回線の接続がされているだけで、在宅勤務者がパソコン等の情報通信機器から離れることが自由である場合には、「通信可能な状態」にはあたりません。
(3)当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと
→業務の目的、目標、期限等の基本的な事項を支持することやその変更を指示することなどは含まれません。

労務管理QandAまた、就業規則に事業場外みなし労働時間制に関する規定がない場合には、就業規則を変更する必要があります。また、「みなし労働時間」が法定労働時間を超える場合には、「事業場外労働に関する協定届」を労働基準監督署長に届け出る必要があります。  注意すべき点として、深夜や休日に労働した場合は、事業場外みなし労働時間制を導入した場合においても割増賃金の支払が必要です。
テレワークを導入する場合、労働時間の管理をどのようにしていますか。
テレワーク勤務者から始業時・終業時にメールや電話で上長に連絡し、労働時間を管理する方法をとる企業は多くあります。また、実際に業務を遂行している場面を、実際に確認しているわけではありませんので、その際の業務内容について、終業時のメールに作業日報として1日の業務内容をテレワーク勤務者に提出させる運用をとっている企業もあります。

労務管理QandA最近ではクラウドによる勤怠システムを導入している企業も増えてきました。インターネット経由でクラウド型のシステムを利用でき、オフィスに出社したとテレワーク勤務で労働時間の管理方法を変える必要のない利便性があります。
テレワークを導入する場合、人事評価制度を変更する必要がありますか。
テレワークのうち在宅勤務制度は、日本では週に1、2日程度の在宅勤務で、会社で働く時間のほうが長いこともあり、従来通りの人事評価制度を適用しているところがほとんどです。

労務管理QandAまた、テレワークのうちモバイルワーク等は、会社で働く時間よりもテレワークの方が長く、人事評価の多くは、目標管理制度に基づく成果主義が適用されます。ただし、目標管理制度は、売上高や顧客訪問件数のように成果を数値化できる営業部門には適していますが、企画・開発等達成度を短期的に数値化することが困難な業務もあり、目標設定と成果報告を適切に実施できる仕組みと上長のスキルが必要になります。

このほか、テレワーク勤務者の評価が、他の従業員と比較し、不利な評価であってはなりません。テレワーク開始から一定期間毎に、上長とテレワーク勤務者の間で、業務内容とその成果について共通理解を深めることが重要です。
在宅勤務者の評価
在宅勤務を実施すると、人事評価で不利益になるのではないかと心配です。
在宅勤務を導入した際に、上長が仕事の結果を適切に評価してくれるかどうかは課題に上がる事が多く、在宅勤務の導入を躊躇している企業も、この点を理由にあげることが多いです。目に見えない部下の仕事を評価するためには、上長も業務の管理や評価のスキルアップをはかる必要がありますが、在宅勤務者が事前に上長と、在宅勤務で行う仕事の内容について、じっくりと話すことが重要です。

労務管理QandA在宅勤務を導入している企業では、目標管理制度による人事評価を行っているところが多くあります。目標管理制度とは、担当者自身が目標を設定し、達成方法を考え、主体的に行動をとるように管理する形態です。
在宅勤務の人事評価のポイントは、期待する水準を事前に示し、目標を設定し、共有します。判断する際には具体的な事実のみを材料とし、印象や推測等の事実確認ができないもので評価してはいけません。また、部下から自らの仕事について説明をさせるようにし、部下が十分に自分の業務内容を計画し、遂行しているのかを振り返りさせることも重要です。また日々の報告や連絡等で目標との間にギャップがあるようであれば、上長からギャップを埋めるようにすることが重要です。
テレワークを導入する場合、労災保険は適用できますか。
テレワークをする人にも、通常の従業員と同様に労災保険法が適用されます。業務上災害と認定されるためには、業務遂行性と業務起因性の2つの要件を満たさなければなりません。

労務管理QandA業務遂行性とは「労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態」を言います。災害発生時に仕事をしていたかどうかが問われます。また、業務起因性は「業務または業務行為を含めて、労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態に伴って危険が現実化したものと経験則上認められること」をいいます。

テレワーク勤務においても、業務遂行性と業務起因性を鑑み、負傷や疾病が発生した具体的状況によって、個別に労働災害の適否が判断されます。たとえ就業時間内であっても、自宅内のベランダで洗濯物を取り込む行為や、個人宛の郵便物を受け取る行為で、転んで怪我をした場合等、私的行為が原因であるものは、業務上の災害とはなりません。
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